2006年 県大会

孫式自選と42式で
今年の県大会は「孫式自選」と「42式総合」の2種目で参加することにしている。
孫式の自選套路を作るのは大変な作業だった。
いろいろな孫式套路、例えば‘老架’だったり、複数の中国人表演だとかビデオを参考に見ながら
組み立てようと試みたが、悩めば悩むほどうまくいかず、ハーフラインを意識すればするほど、
さらに套路はまとまらず、‘まとまらないドツボ’にはまってしまった。
結局、ある中国人がしていた套路でジャスト4分!というのを見つけたので、
ズルしてそのまんま‘いただき♪’してしまったというお粗末さ・・・
後は練習あるのみ!
もうひとつの42式のほうは、時間も一定しているので心配してないが、
孫式自選は時間を計るごとにタイムがバラついてしまう。
本番では早めに動くことを心がけて時間オーバーしないようにせねば・・・

名簿
大会一週間前。大会の名簿が届いた。
楊式規定、1名。
この1名というのが、昨年まで楊式規定に出ていた万年1位の重鎮のおばさんではなかった。
昨年は真っ赤な表演服で堂々と楊式規定をされていたので
私は勝手に‘赤いおばさん’と呼んでいたのだが、今年の楊式は別のおばさんになっている。
「世代交代か?」
いやいや、そうでもないらしい。
今年の楊式規定1名の方も年輩の選手なのだから・・・
‘赤いおばさん’は32式剣に種目変えしていた。
「楊式に飽きたのかな?」
大会運営では審判長クラスのおばさんだから、他の選手と比べられるのを嫌ったのかもしれないが
どの種目に出たって悪い結果がでるわけでもなし・・・
それより驚いたのが
「呉式ぃ!?(驚)」
県大会初お目見え、ついに呉式登場だ!
「I先生!?」
I先生は48式で入賞数回、数年前私が「次は呉式覚えようかな(笑)」と言った時、
「楊式なんだか孫式なんだかフラフラしないほうがいいわよ!」と苦言を呈されたあのI先生だ。
その先生が48式をやめて呉式に転向ですかぁ?
I先生と同じ教室の、これまで88自選で全国大会にいっていたMさんもいっしょに呉式に転向。
「・・・どこで習ったんだろ?」
ま、私は伝統拳好きだから、満を持して呉式が県大会にでてきたことを嬉しく思っているが、
それがI先生とMさんだなんて・・・
規定がMさんひとり、自選でI先生とひとりずつの表演。さすがに卒がない。
連盟の講習会で習う機会があったのだと思うが、どういう呉式なんだろ。今から楽しみだ。
でも正直、「(ちぇっ、呉式取られちゃったよ・・・」ってな気分でもあったのだが・・・

そして42式は・・・と。
「7名か・・・」
私と組む選手の名前に聞き覚えが。Eさん・・・全国大会の名簿をめくる。
「(・・・あ、やっぱり!)」
全国大会出場者じゃん。これじゃ、勝ち目ないよ。だから組まされたんだろうけど・・・
つーか、もう、全国大会出場者名簿はもう出来てるようなもんだし、
県大会での点数だって決められてるんだろうからさ。
それに7人中、連盟部外者は私だけ、てことは・・・
「私のビリ決定ね・・・」
実力ないくせに、ひねくれた考えしてる私なのですが、
県としては私は孫式でひとりなので孫式で全国大会に、と考えているのでしょうが
(ま、それだって県大会でのデキが悪ければ到底選ばれないのだが)
42式に出る限りは、42式でも1位になって、42式は辞退して孫式から出るくらいでないとね。
とほほ・・・そんな欲張りなこと言ったって
「私のビリは決定済みよね・・・」

言われてみれば・・・
楊式規定、呉式規定、呉式自選、孫式自選の順で11:30頃から始まる。
出場する4人は皆顔見知りである。
なぜなら以前同じ団体に所属していたからだ。
楊式の人は前々から楊式を得意としていた方だし、I先生は私が初めて太極拳を習った先生。
Mさんとも一時期教室でいっしょだったことがある。
今では3人とも連盟の団体に移籍し、また教室を立ち上げたりとそれぞれ活躍されている。
私はというと非加盟団体にすら所属せず、独り河原で自主トレの日々。
Mさんに言われるまで気づかなかった私だが、伝統拳4人が昔同じ団体の人間だなんて奇遇!
「ついに呉式登場ですね。これで楊、陳、孫、呉の伝統拳出揃いましたね」
そうMさんに話しかける。
またもはじめて見る表演服を着て登場の衣装持ちのMさんに
「この表演服は新調されたんですか?(私も欲しいなー)」
「ううん、これはお下がり。さっき着てたのは新しく作ったんだけど」
「中国でですか?」
「ええ」
聞けば、中国に研修旅行があって、その時に呉式を習い、表演服も作ったのだそう。
「中国はどちらですか?」
「深く聞かないで!(ぴしゃり!)」
私は中国の上海か北京かという軽い意味で聞いたのだが、「どちらですか?」は体育大学か芸術院か・・・
といった細かな意味に取られたらしい。呉式伝授のお里は知られたくない、ということなのだろうか?
別に私なんかから口が割れるわけでもなし・・・
そんな小さなバトル(牽制)があって私たち伝統拳の表演開始。
まずは楊式から。緊張されていたのか覇気はないは、微妙に動きは止まるはで・・・
目も泳ぎ、套路に迷いすら感じられ・・・
お次はいよいよ呉式登場。
まずはMさんの規定套路から。
さっき、練習場でも見学したのだが、Mさんはとてもいい動きをされていた。
‘いい動き’と言ったのは、私は審判員でもないし、そのような目も持っていないのだから
‘呉式らしい’という意味での‘いい動き’だ。
呉式は体が斜め(靠れる)動きを特徴とする。定式では直線的な体を表現する。
Mさんには、その形がはっきり見られた。
「来年の全国大会では呉式初出場、いきなり入賞か・・・」
次の自選套路で登場したI先生の呉式は、その点どちらかといえば制定拳に近いような。。。
それもそのはず、これまで48式でずっと通してこられて入賞経験者でもあるわけなのだし。
でもま、そのI先生のことだから全国大会に照準を合わせて上位入賞を狙うに決まってる。
さて、私の孫式。
毎回がMy bestの私なので、本番は満足いく出来だった。
しかし自己満足と評価は別物。
結果は低〜く8.5
うわー、去年より低いじゃんかー。
ま、別にいいです。分かってたことですから。点数は捨ててますし。
「今年は8.5」、っつーことで決めてあったことでしょうし。。。スゴスゴ・・・

予想外の結果
もうひとつの42式は午後最後の種目。
それまでお昼ごはん食べて、伝統拳術でも見学しよっと。
今年は男子の伝統拳術選手が棄権で八極拳の彼女ひとり。
「(がんばってるなぁ・・・)」

私と組む選手のEさんは予想に反して結構年輩の方だった。
だからそれなりに年季もはいっていて、練習場では体の柔軟さが際立っていた。
足がおでこにつくかのような屈伸とかしてたりして・・・(太極拳するには当たり前のことなんでしょうけど)
そのEさんに「お上手ですよね。太極拳始めてどのくらいなんですか?」と聞かれた。
「(上手じゃないよ!そんなん言われたら答えづらいって!)」と、とっさに思った私は
「あ・・いや・・始めたばっかりで・・・」と濁してしまった。まんざらウソでもないし。
「10年くらい?」とスルドイ探りにも「・・・休み休みですので何年にもならないんです」と答える始末。
そんな小さなかけ引きがあったせいか、後半少しペースが乱れた。
後半、相手のペースが目に入って飲まれてしまったところが心残りだが、まずまずのデキだった。
ま、My bestだろうが、そうでなかろうが、結果に影響することもないと思うし。
結果は低〜く8.51
8.51の0.01はもしや点数の挙げ間違いなのでは?
8.50と挙げるところを、間違って8.55と挙げてしまったとか・・・?
Eさんは8.6点台を出しましたから、ことしも1位全国大会行きでしょう。
私は最初の組だったので残る5人の表演がある。
「(どうせ8.51で私が最下位よ・・・)」
そう思って見ていたらなんと!
8.50が!
「(え??私、ビリ脱出ですかぁ?)」
その後の選手も同じく8.50。
「(え??私、ブービー賞でもないんですかぁ?)」
そして7人目の選手。最後の選手は伝統拳術で八極拳に出た選手だった。
手が蝶々のようにビラビラで気になって仕方ない。
彼女の結果は8.4点台に終わった。
「(うっわー、凄いじゃん私!7人中4位やん!真ん中、真ん中・・・♪)」
てっきりビリだと思っていただけにビリじゃなかったというだけで狂喜乱舞するtuzi。
・・・点数のつけ間違いを真に受けて喜んでるようじゃ、
だからおまえはいつまでたってもダメなんだよっ!

閉会式で
掲示板の前を通ったら42式の結果が貼り出されるのを待つ八極拳の彼女(Hさん)を発見。
Hさんに話しかけるチャンス。
とはいうものの、今日は小さなバトルがふたつも(MさんとEさん)あって、
またここでHさんに牽制されるのでは、と怯みそうな気持ちだ。
が、ダメもとで思い切って話しかけてみる。
「あのぉ、Hさん?Hさんはどちらで八極拳を習ったんですか?」
突然の質問にもHさんは気さくに答えてくれた。
「東京なの」
「では、以前は東京にお住まいだったんですか?」
「いいえ、年に2回合宿の時だけ行ってるんですよ」
年に2回習っただけで覚えられるものなの??
「習い始めてどのくらいですか?」
「3年目かな・・・」
3年・・・てことは昨年から出場し始めたからあの時は2年目だったのか・・・
「でもね、太極拳の基礎がなってないから、連盟の教室で太極拳習ってるんです」
ふ〜ん、それで42式だったのか・・・
でもさ、八極拳って太極拳の基礎が必要なの?
そうなの??
太極拳というより長拳のような少林拳のような、そんな基礎とは違うのかな?
そこのところは分からないが、とにかく彼女は太極拳より先に八極拳から入ったらしい。
「tuziさん、毎年全国大会に出てますよね」
「あ・・・はぁ・・・まあ」
出てることは出てるけど毎年成績はパッとせず・・・出てるなんて言うのが恥ずかしい。
そんな話しをしていたところに42式結果が貼り出された。
「あらぁ、私ビリだわ」
と明るく言ってる彼女にかける言葉も見つからず「ではまたお会いしましょう」と別れた。

閉会式では1位に賞状が授与される。
42式の1位はやっぱりEさんで、I先生の教室は個人競技はもちろん集団競技も対練も1位総なめ。
隣りに立ったI先生が「よかったわね。孫式でまた全国大会に行けて!」と囁く。
実力もないくせに非加盟個人が温情で全国大会に行かせていただいてるんですものね。。。

あ〜あ・・・それにしても、大きな口が叩けるほどの成績を残したいものだ。。。
県大会で優秀な成績を残すためには、全国大会で優秀な成績を叩き出すしかありません。
全国大会で優秀な成績を叩き出すためには、脚を高〜く上げるしかないのでしょうか。
ふ〜。
やっぱりそこなのか・・・
脚さえ上がればいいんだったら何式でも関係ないじゃん。
太極拳にまったく興味のない父(中国嫌い)が言っていた。
「見た目だよ!踊りみたいなもんだろ?テレビでやってたダンスみたいなもんだよ。
種目も同じようなもんじゃないか。タンゴだのワルツだの・・・」
話しを聞いてるうちに、太極拳も大会だって一度も見た事のない父の言うことのほうが
核心を突いてるような気になってきた。
以前の私ならそこで反撃に出て「太極拳、っつーのは武術なの!踊りじゃないのよ。強さなのよっ!」
と熱く語るところだったが、今では「・・・そうね。見た目が綺麗だったらいいのよね」と
かなり競技太極拳に毒されてしまった。
私は競技大会にも出場し、強欲にもそこでよい成績が取りたいと野望を持っている。
しかし、最近、ド素人の父が言うように、競技太極拳は‘見た目の美しさ’も問われている、
ということを私自身受け入れざるを得なくなってきた。
心中は違う。
‘強さ’を追求した上で結果的に‘美しくなる’のなら分かる。‘見た目の美しさ’ばかりを追求するべきものではない。
なぜなら、順序が違えばやはりそれはただの‘踊り’だからだ。
あくまでも‘強さ’を追求するからこそ‘武術’なのではないだろうか?
それなのに‘踊り’が評価されるのはおかしくないか?おかしいでしょ・・・。
それは審査する側が‘武術の美しさ’なのか‘踊りの美しさ’なのか
見た目だけでは判断つかないということにあるようだが・・・
そこのところも父が言うように
「人が人を見て点数をつけるんだから、そりゃ好き好きだろ?好みもあるんだよ」が本当のところなのかもしれない。

そういったわけで今回の大会で‘競技太極拳’と‘太極拳’は区別する必要があるな、と私は思った。
区別しないから悩んだり、苦しんだりしなければならないのでは、と。
とはいうものの気持ちの上では区別できても、哀しいことに私には競技太極拳での‘見た目の美しさ’を
身につけることはできそうにない。だから、これからも私は私の太極拳をしていく・・・
「それしかないのダァーッ
(by アントニオ猪木)




2007年全国大会

出場順名簿
出場順番は選手なら誰もが気になるところだと思う。
私のような者でも関心は高い。
「(何番目の出番なのか・・・)」
「(何県の人と組むのか・・・)」
「(Aコートなのか、はたまた後ろのBコートなのか・・・)」
これによっては点数にだって影響が出ると思うのだ。
だって、どう考えてもトップバッターは基準点になるため分が悪い。
そりゃ断然、トリのほうが点数的には有利だと思う。

今年私は3番目の出番だった。
「(早い・・・)」
入場してから延々他の選手を見続けて変に緊張が高まるよりは、
サッサと終えちゃったほうが気分的には楽だからそれはいいとして・・・
私たちの前、2番目出番の選手が・・・
「(シード選手ふたりがぶつかってる・・・)」
優勝を狙うシード組ふたりが激突!・・・の後が私かよ?!
とほほ。
明らかに審査員の休憩時間じゃないのかよ?!
毎年、私の演技なんか見てもらえてないみたいなんだけど。
だって、チラと審査員が視界に入ってもその審査員は決まって下向いてたし・・・
今年もそんな調子なんだろうな。

それに今年はあまり練習していない。
というのも、教室を開講してそっちにエネルギーを吸い取られてしまったからだ(←言い訳がましい)
教室は教室。
練習は練習。
そう思っていたのに体がついてこない(←ますます言い訳がましい)
おまけに手首の痛みが消えず、練習がだいぶ疎かになっていた(←いよいよ言い訳だ!)
そんな訳で気ばかり焦る中、時間ばかりが過ぎ去って本番当日を迎えることとなったのでした・・・

7月14日(土)
車内で・・
例年ならこの時期、夏のまっさかりで暑くて暑くて仕方ないはずだが、折りしも今年は台風4号が日本列島を直撃。
大型の台風4号が猛威を振るっており九州四国地方は大雨、強風で飛行機も飛ばないといった被害まで出ている。
私も、関東に向っている台風に向って行くわけでして、交通情報には敏感だった。
幸い、家を出る時間は台風の影響もほとんどなく定刻に発車。
車内は三連休の家族連れや行楽旅行のご夫婦、はたまた団体で満席。
通路を挟んで隣のおじさんは小さな孫と一緒で、この孫がやたらとうるさかった。
少しもジッとしておらず、おじいちゃんを困らせている。
何かと言えば「ヤダヤダーっ!」を連発し、
「2に行くぅ!」(2号車のこと)と、せがんではその度におじいちゃんは孫を連れて2号車へ。
帰ってきたら帰ってきたで今度は「4のとこ行くぅ!」(4号車のこと)と
おじいちゃんにまるで暇を与えない。
なだめてもすかしても聞きわけのない子どもの事、座ろうとすれば
「ヤダヤダーっ!4のとこ行くぅ!」とさらに声が高くなる。
おじいちゃんが甘いから言いたい放題、車両内に響きわたる遠慮ない大声でダダをこねまくる。
私がいくら子供と目が合って「キッ!」と睨んでも完全無視。
自分の子供だったら「うるさいっ!ゴン!(ゲンコツで殴る音)」だ。
それでも収まらなかったら口をふさいで「黙れっ!ペシッ(平手で叩く音)」だ。
・・・とは言っても、それで聞き分けるなら誰も苦労はしないのだろうが。
ま、隣の子供を睨みつけてるうちに東京駅に到着。予想通りの雨だった。

神田で・・
10時30分頃に東京駅に着き、このまますぐに体育館に行っても時間を持て余す。
1時頃までに到着すればいいだろう、と考えていた。
この期に及んで練習も別に・・・(疲れるだけで、するだけムダ)
かといって見学も別に・・・(どれもいっしょで、もう見飽きた)
早く着いても無用に緊張感高めるだけだ。かといって2時間という中途半端な時間しかない。
「神保町にでも詣でるか!」
私は神田で降りて御茶ノ水から乗ることにした。
競技服とシューズ、お昼のジュース、出番が終わったら一服のジュース、帰りの新幹線で飲むジュース・・・
それに万が一の水・・・
その場で冷えたものを自販機で買えばいいものを、わざわざ持参してる私。
荷物はないようにして持って歩くにはチョイ重い。
それに傘をさして片手に持つにはチョイきつい。
しかも神田で降りるのも初めてだった。ということに降りてから気がついた(爆)
「・・・失敗したぁ」
どっちや?
神保町はどっちや?
これは人を捕まえて聞くしかない。
キレイな傘をさしたおねえさんに「あのっ!神保町方面はこっちでよいのでしょうか?」
「さあ、私この辺の者じゃないから・・・」
少し歩いて、サラリーマン風のおにいさんに「あのっ!神保町方面はこっちでよいのでしょうか?」
「さあ、この辺の土地勘ないから・・・」
なんじゃ?
東京人と見せかけて、実はみんな田舎もんかいっ?!
またしばらく歩いてまた聞いて・・・
教えてもらったとおりに歩くこと15分。雨の日に荷物持って歩くには遠過ぎた!
雨に濡れながらやっとこさ着いた神保町。
太極拳関係の本やVCDを見に書店に行ったがめぼしい物は皆無!
だって〜、李徳印ばっかなんだん・・・
李徳印相手に長居は無用だ。御茶ノ水駅に向う。ここは坂道。もう、脚がつかれちゃたよう〜・・・
快速で新宿を目指す。新宿まで行って、各停で千駄ヶ谷まで戻ったほうが手っ取り早いからだ。
「・・・まてよ?まだ時間があるしな・・・そーいえば13年前初めて中国に行った時一緒した
ピータンおばさんとおじさん、中野の駅前でラーメン屋してるって言ってたっけな・・・」
「言ってたっけな、」って言ったってその店の名前も知らなきゃ、行きようがないではないか。
駅前のラーメン屋ってったって一軒や二軒じゃないだろうし。
ま、でも時間もあることだし中野まで行ってみっか!
私は新宿を通り越し、中野まで足をのばした。
新宿より向こうに行くのも初めて、中野に降りるのも初めて・・・

中野で・・
中野着。
「・・・・・」
どっち口?せめて住所だけでも持ってくるんだった。
と言っても、さっき電車の中で思いついてやってきてしまった中野である。
ただの思いつきでやってきた中野だものピータンおばさんのラーメン屋など見つかるわけもない。
私はそんなことを考えながら当てもなく雨の中をぶらぶら歩いた。
丸いロータリーを一周し、デパート横の細い坂道の路地に入った。
その路地の入り口にラーメン屋の看板を見たからだ。
でも実際行ってみたら最近できた風の若者向きのラーメン店だったが・・・
「あのおじさんとおばさんの店はこんな今風ではないはず」
しかも13年も前に出会った人、高齢で店など辞めてしまっているかもしれないし・・・
私は当てもなく坂を登り、左に折れてみた。
どこまで行ってもそれらしきラーメン店はない、なさそうだ・・・
正午を過ぎていたが私は珍しくお腹がすいていない。
体育館で持ってきたジュースを飲むくらいでいい、と思っていた。
そろそろ戻ろうとしたその時!
インド料理店発見。
しかもバイキング!
サラダもあるし、カレーも数種類・・・
「バイキング♪」
新宿でロシア料理これまたバイキングしようかとも考えていたが、
「今日は中野でインド料理バイキングしよう」(←お腹すいてない、って言ったばかりじゃないか)
私はバイキングという言葉にとことん弱い。
さしてお腹もすいていないのにバイキングは見逃せない。入らずにはいられない。
店内の奥にはテーブル席もあるようだが、私はひとりなのでカウンター席に座った。
インド人の従業員が数人と、日本人の女性がひとり。
バイキングだからってあまり食べ過ぎないように気をつけながら、
カレーとナンそれにドライカレーライスをトッピング。カレーの具材の中にオクラが入っている。
「インドにもオクラがあるの?」
「アリマスヨ、ゴーヤもアリマスヨ」
面白かったのがデザートで、フカヒレのような細いニョロニョロしたのがヨーグルトの中を泳いでいる。
でも甘い。そして美味しい♪
「このヒョロヒョロしたのなんですか?」
「小麦粉で作ったものです」
カウンター席だから食器を洗ってる人と話したりしながら食していた。
おっと、もう1時を過ぎてる!
あわわ・・・

千駄ヶ谷で・・
中野から各停で千駄ヶ谷へ移動。中野〜新宿間にもけっこう停車駅があるもんだ。
台風が近づいてるようで雨脚が強くなってきた。
まっすぐ更衣室へ。館内は相変わらず蒸し暑い。
自選なので自分がつくった套路なのだが、自分としては少し修正が必要に感じていた。
ハーフライン制というルールがある。
コートを半分にし、始めた側のコートへ戻って終わらなければならないというものだ。
私の場合、戻りすぎるというか。練習で毎回気になっていた。
できれば、始めた位置で終わりたいじゃない?
だから時間が許せば、動作をひとつ足したいかな?と思ってね。練習場でそれを試してみたかった。
「うん、イケそう・・・」
私はそれだけ確かめて、着替えを済ませ受付に向った。
そこでY氏とすれ違った。
Y氏の奥様とは教室でいっしょだが、Y氏は仕事の関係で他県に住んでおられる。
だが、5月の講習会の時などは参加されてるので顔見知りなんである・・・
声をかけたのだが、Y氏は気づかず練習場の方に階段を下りていこうとしていた。
実はY氏も今大会に出場しており、昨日競技を終えたのだった。
今日は私をカメラ撮影してくれるとメールをいただいた。ありがたいです。
「昨日はいかがでしたか?」とうかがうと、成績が昨年より上がったとのこと。
いっしょに組んだのが、あの万年優勝のW氏だったこと。
「そぉだったんですかぁ!」
そのW氏の集中力は半端じゃないとのこと。
「それとね、前の組の人、後ろ向きで終わっちゃってね」
「はぁ?(驚)」
「そんなのありですかー(笑&驚)」
「次なのに直前に嫌なもの見ちゃった、って感じですよね(笑)」

受付済ませて整列したら、なんと1番目、2番目、ともに欠場があり、ひとりずつとなった。
よかったんだか、悪かったんだか私は3番目で相手がいらっしゃったが、シード選手が欠場って。
入場してからも自作の套路なのに忘れそうでなーんか不安で・・・私は何度も確認を繰り返す。
それと、撮影してくれるっていうY氏。
袖にいるんだもの!
「恥ずかしいですよー、写真は客席からでもよろしいのにぃ」と言ったものの
「あとで見直すのに上からだと動きが分かりづらいし、得点掲示板くらいまで出ても叱られそうにないから」って。
近っ!そ、そ、それはー(焦)視界に入っちゃいますからぁー(恥)」
ま、始まっちゃえば視界に入ろうが気にならなくなるんだけども・・・。
演技は時間配分もまずまず、失敗もなく無難に練習どおり終わった。
後日、Y氏が郵送くださった写真をみて、自分の脚の上がりようにビックリしたくらいだ。

 
勢いだけであげました(笑)


終わってみて感じたのだが、横移動が少なすぎたような気がして動きが停滞したかもしれない。
これは套路作りを凝らなかったミスであるのだが。
今年から伝統拳での規定套路廃止なので、他の選手の套路は今後の套路つくりで参考になった。
斜め斜めで押し出す選手もいたり、伝統孫式に見られる90度をうまく取り入れてる選手も多く見られた。
90度は伝統孫式に限らず、伝統拳では一般的だ。それが伝統拳の特徴といってもいいくらいだ。
結果はA選手、8.80
おおーっ!
シード選手のKさんを抜いてる!
なんだよーっ!
私と組む人っていっつも高得点じゃんかよーっ!
B選手、8.50
あ〜あ〜。この落差はなんなんだ?!
8.65挙げてくれた審判員もいたのになぁ。
8.6点代だったらなぁ・・・
それにしてもエライ開きじゃ(恥)
カメラマンY氏はあたたかく迎えてくれたが、4年も連続でこんな低得点じゃぁねぇ・・・

即行で更衣室に戻ると一緒に組んだ暫定1位のK選手も着替えているではないか。
「お疲れ様でしたー、あれ?着替えちゃったんですかぁ?表彰式があるじゃないですか」と声をかけると、
「あら、そうだったわ♪」とまた着替えていた。
いいなあ、表彰式。今年も私は遠く及ばずだ・・・
私は帰り支度して更衣室を後にし、客席のカメラマンY氏夫妻の元に直行した。
Y氏は最終日あすの‘中国伝統武術代表団’の表演が見たいとおっしゃっていたが、都合で来られないという。
言われて私は体育館内のその大きな看板があることに初めて気がついた。
大先生達が中国から招かれていることを初めて知った。
プログラムもろくに見ていなかった私は、その来日している著名な武術の先生方の紹介ページを開いてみた。
10名ほどの代表団の中に孫式の孫永田第3代伝人の名前が。
でもねぇ・・・
孫永田を見たいとは思わないよね。VCDだけでたくさん、って感じだもの。
他の人はどうだろう?
さあ、わからない。
もしかしたら、もの凄い達人が紛れているのかもしれない。
例えば、形意拳の張希貴とか。1937年生まれ段位8段よ。クンクン・・・なんか達人の匂いが・・・

Y氏夫妻は私より一足先に体育館を出たが、私はひとり残って自分の孫式だけを最後までみて、
最終結果をみてから帰ろうと思い、そのまま第3コートを見学していた。
それにしても退屈だ。
どうしてこう面白みがないのか・・・
どれもこれもビラビラ体操にしか見えないんですけど・・・
孫式に限っていえば、まず孫式の軽快さは、どの選手にも見られない。
孫式らしさなどないのだ。捨ててるのだ。いや、点数と引き換えに捨てるしかないかのようだ。
というわけで、楊式のようなボヤ〜、ボヤ〜〜としたリズムの孫式。
ま、どのみち、どの伝統拳も審査基準は同じなんだし、さらにいえば制定拳とも同じ。
どれみても同じ拳式に見えちゃう。足が上がれば高得点。柔らかく、マッタリ〜〜と動けば高得点。
手の動きもキレイで足もピーン!と伸びちゃって「おおーっ!」と観客席が唸ってても、
その選手の点数は伸び悩み、8.5点代に終わったりしているんだもの。
どういうこと?
知名度?
そういえば、シード選手なんてチョットふらついて、その後ヤル気無くして流して終わっても8.7点はかたいもんね。
あーっ、思い出した!
私と組んだ暫定1位のK選手も更衣室で「私、套路間違えちゃってー」って言ってた!
それでも8.8点だからね。
どうなっちゃってんのさー?
極めつけは昨年1位のH選手、さして他の選手と差はないのに8.93点て!
やっぱ、一度シード選手になって知名度上がれば、それっきり確定ってことなのかしら?
演技の前にあらかた点数決めてある、ってことなの?
だって、あんな即座に点数上げられるもの?
とにかく毎年、同じような顔ぶれの入賞者に割って入るのは、かなり難しい。
私は毎年そうなりたいと思って参加してるわけだけども・・・
とにかく、競技の演技って、点数上げるための演技なわけで。これが退屈なのよねー。
やってても退屈、見てても退屈。つまんねえ・・・
伝統拳て、そういうもんじゃないでしょ?
どんな技量の人がやって見せても、何かしらあるじゃない?
面白みというか・・・
味というか・・・
ヘボはヘボなりに楽しめる・・・
それが伝統拳の套路の持つ魅力なんだと思うのね。
でも、ここ競技大会ではそんなの誰も出してないし、個性すら感じられないのよねー。
不可解だよ・・・
伝統拳が制定拳に見えちゃうなんて。

有名人と・・
一年目に遭遇した李先生♪と、また遭遇しないかと毎年期待してしまう私だが、
以来一度もお会いする機会がないままだ。
昨年は観客席で陳静さんと遭遇した。そしたら今年も遭遇したのである。でもそれは正宝さんだった。
「(あ、本物・・・)」
正宝先生は取り巻きもなく、おひとりで静かに観覧されていた。
声をかける人もなく・・・だいたい、ふつうのオッちゃん過ぎて誰も気がつかないみたいでした。
・・・そんな思いがけない遭遇もありで、私は掲示板に張り出された最終結果をみて帰途についた。
順位は棄権欠場した4人の選手を除いてちょうど真ん中。(31人中15位)
昨年は下から数えた方が早かったから、それに比べれば健闘したほう。
なんだかなー。
年々「成績残したい」願望も薄れ、惰性で参加してるような大会。
自分の点数に対しても貪欲さがなくなってきている。
モチベーションが下がりに下がってきている、とでもいうか・・・
私自身、大会に対しても以前のような重きを置かなくなってきている。
もっぱら‘祭典’として楽しむようになってきちゃったし、
ろくに練習もせず、一年に‘メリハリ’を持たせる意味での参加になってきつつある。
以前からもそうだったが、「悔しい」とか思う以前に、
私が成績を残すことは「どだい無理」という諦めのほうが勝ってきているのだ。
そんなわけで、台風の中に飛び出した私の頭の中は、お土産のことでいっぱいだ。
黄色い電車(各駅停車)で東京駅に向った。
秋葉原を過ぎて浅草橋、次は両国〜、とアナウンスがあった。
「両国、って山の手内だっけ?・・・そうだっけかぁ」とのんびりしたものだった。
各停だから結構駅があるもんなんだー、くらいに考えていたのだ。
ん?待てよ?錦糸町?
次は亀戸〜。
「はぁー?亀戸は違うだろっ!」
さすがの田舎者にも亀戸が山の手内でないことは分かった。
座席に腰掛けてた私はムックリ立ち上がり、電車内の路線図を確認。次の平井に着く直前だった。
「新小岩まで行っちゃって快速総武線で戻ろう」
いやはや遠くまで来たもんだ・・・
千駄ヶ谷を出て東京駅に着くまで1時間もかかっちゃったよー。
結局、東京駅構内でお土産をあれこれ調達し、夕飯には「東京といえば深川飯」をGETした。

 写ってないけど、窓の外は台風で横殴りの雨。




北の外伝

北へ・・
話しは終わっていない。
話しは遡って数ヶ月前、ある北の地で伝統武術の大会があることを知った。
表演あり、無料講習あり。
私らはふたりで無料講習に参加すべく申し込みを済ませていた。
郵送されてきたハガキには、お目当ての講習は2時からとあるが、
せっかく行くからには9時からの表演も見てみたい。見学も無料だ。無料づくしの大会・・・
いったいどんな大会なのかピンとこなかったりしていたが、この大会そのものが第1回らしい。
こういう機会は滅多にあるものではない。
それというのも、この大会の企画をした中国人老師というのが、陳式するならこの人!と
私が何年も前から目をつけていたその人だったからだ。
この老師が北の地に在住されていることも、もちろん前々から知っていた。
数年前にはその地に住む同業者にそれとなく聞いてみたこともあった。
ま、蛇の道はヘビ、っつうことで太極拳に興味のないその人は「しらねー」と、答えただけだったが・・・
とにかく、演武に入れば‘どっかに往っちゃう’その人の陳式はよかった。
そもそも私はその老師の叔母さんなのかな?立清女史のファンだった。
私が太極拳を始めて2年か3年を過ぎた頃、借りたビデオの中に映っていたのだが、
その中にはたくさんの拳式がダイジェストで納められており、日本でもお馴染みの老師もたくさん収められていた。
だが、その中でも私の目を釘付けにしたのが、かの立清女史その人だったのです。
その時は何度も何度も巻き戻しして見たものでした。
その血筋を受け継ぐ陳式の伝人が北の地に住んでおられるのです。
羨ましい限りでっせす・・・
なんて恵まれてるんだろう、と思いますよ・・・ほんとに。
なのにですよ!
驚いたことに、この陳式の伝人を知らない人が太極拳経験者の中に意外に多いということです。
陳小旺、陳正雷、王西安(私は王西安の陳式も好きです)などは広く知られてるんだけど、
P老師となると「誰それ?」とかえってくる。
どうなってんのぉ?
太極拳歴十数年の指導員クラスがP老師を知らない、ってどういうことぉ?
信じらんないっ!
こんな私だって知ってる、陳氏第20代伝人を知らないってどういうことぉ?
ふしぎー・・・

7月15日(日)
朝5時半起床。お昼の弁当を作って6時23分出発。台風に追われるように高速道路をひたすら走ること3時間。
雨に降られたり、濃霧に襲われながらも無事到着。9時からの表演に間に合った。
さすがに台風から遠く離れた北の地は晴れていた・・・
2階席に陣取って、大会席を見やれば、すらりと背の高いH老師は一目でわかった。
「・・・本物だ〜♪」
そしてその横を見やれば黄色いシャツの・・・
「あらぁ?・・・Y氏?・・・Y氏だよね・・・Y氏じゃん!
もちろん奥様もご一緒♪
それからもう御一人、ネット上で写真を拝見しただけだが、孫式のH氏も会場に。
さすがにY氏、陳式の第一人者である。

今大会は太極拳に限らず、日本の古武術も披露される大会だった。
日中文化交流として広く‘伝統武術’が演武される。
その多くの演武は来日して長いP老師指導の結集といっていいものだ。
この北の地にP老師がいる、ということはここは太極拳の町として全国に轟く喜多方にもなりうる
そんな予感をさせるものでもあった。
後援をみただけでも市はもちろん、県をあげて普及の応援をしているではないか。
ほんと、羨ましい・・・
てか、私の家からも少し近かったらなあ・・・
あまりに遠すぎるよ〜(涙)

P老師は・・
午前中だけでもゲップがでるほど陳式を堪能した。話しにだけは聞いたことのある、花架拳も初めて見た。
「へぇー、これが花架拳かぁ・・・ふ〜ん、天女なんだぁ・・・」
他に可愛らしいなぎなた教室のお子ちゃまたちの演武もあって、とってもよかった。
日本人なのに日本の武道に触れたことがない、ということに初めて気づいた私だった。
日本の武術も捨てたもんじゃない。
特に午後の部で披露された日本の制定居合いには感動した。
4人で制定居合いを披露してくださったのだが、その安定した足腰から発する居合いの型!
「ハタ!」ときまる刀の位置、その姿勢に少しのブレもない!素晴らしかった!
「カッコいい〜♪♪」
日本の武術も捨てたもんじゃない。
いや、日本という枠では語れない。万国共通、これぞ伝統の持つ威力なのだろうと思う。

お昼になった。
私たちは手弁当を持参していたが周りを見渡せば私たちの座ってる一角の6人くらいを除いて
みんなお揃い弁当を食べている。
てことは、演武しないただの見学者はここ一角の私たち6人だけなのか・・・
県外から来てるのはもしや私たち2人だけ・・・
P老師にタダで習える機会だというのに県外から来たのは私たち2人だけって・・・
それはそうと!
私はTシャツが欲しかった。
これまで、私の属する団体でもTシャツを目にすることは多々あったが、いっこうに興味を持たなかった私がだ。
むしろ購入を拒んできた私がだ。
「Tシャツに300円以上だすつもりはない!」と豪語してきた私がだ。
東京の大会でも毎年Tシャツは売り出されているが、まったく見向きもしなかった私がだ。
「Tシャツ欲しぃ〜♪」
と言ったものだから連れが驚いたのなんのって!
私は売り切れる前にどうしてもGETしたくて、売店に急行した。
そこではTシャツのほかにも協会グッズがいろいろ並んでいて、その中に写真集もあった。
昨年、P老師の故郷で開催された大会に参加した時の写真集だという。
「見せていただいても・・・」とペラペラめくっていたら、P老師大好きオバちゃんが一枚一枚熱く解説してくださった。
「P老師はね、演武の前の集中力が凄いのよっ!急に動き出して、そりゃもうね、引き込まれそうよ!」と、
これまた熱く語る。
引き込まれるんじゃなくて、P老師が、どっかに往っちゃうんだよね?って思って可笑しくなったけど黙ってた(笑)

2階へ戻ろうとしたら、ロビーに昼食を済ませたP老師の姿が。
写真をお願いしたいが、私なんか面識もないし、生徒でもないし・・・陳式もしたことないし・・・モゾモゾ・・・
しばらくモゾモゾしながら眺めていたが、ロビーには多くの人がいたにもかかわらず、
P老師に話しかけたり写真を求める人もなく静かなものだった。
チャーンス!
私は意を決してP老師に近づいた。
「P老師。はじめまして。私、○県からP老師の講習を受けに来ました。
陳式は初めてなんです、どうぞ宜しくお願いします」
「今日は表演しないの?見るだけ〜?」
「はい、P老師に習うために来ましたっ!」
並んで写真をお願いしたら、P老師は近くにいたオッちゃんを呼んで3人で記念撮影となった。
ところで、このオッちゃん誰??
・・・あとで知るところによると、協会の会長さんということでした。

Y氏は・・
午後の講習に備えて着替えを済ませ2階の客席に戻って食事をしながら下のコートをぼんやり見ていると、
腹ごなしなのかY氏とH氏が太極拳ごっこで遊んでる。
「すっげー!スリッパ履きで陳式て・・・」
うむむ・・・さすがだ!
「すっげー!スリッパ履きで八卦掌て・・・」
うぐぐ・・・さすがだ!
なかなか、できるもんじゃないですって!
スリッパ履きで。
このような光景は滅多に見れるものではない。超レアな写真として隠し撮り!(御免っ!)
(Y氏及びH氏、この文面または写真等を承認も得ませんで掲載しましたこと。
また、そのことで不都合がございましたら、お手数ですが連絡下さいますようお願い致します)

 スリッパ履きで震脚て・・・


 スリッパ履きで回るて・・・


体験コーナー(無料講習会)に参加すべく整列すると、大会演武者ほぼ全員参加か?と思わせるほどの大人数。
体育館がいっぱいになったほどの。
飛び入り参加も認められ、あたしゃハガキでの事前申し込みは何だったんだ?状態。
P老師は舞台上でマイクをつけて動作説明を始めた。
1時間しかない短い時間で套路説明などムリな話しなのだろうが、それにしても座らせて休ませてばかり。
「疲れてませんからー!バシバシ進めてくれよー」てな気分の私でしたが、
それ以上にP老師の言葉はひとつひとつが私に重く響いた。
まず、太極拳は中国思想に反映しているという話し。
陰陽思想は中国人の対人関係のあり方を象徴しているようなものだ。というのだ。
陰は陰にあらず、それは陽に転じ、盛陽となったのちは陰に転じていく・・・
それは止まることなく、繰り返される宇宙の法則だ。
これが中国人の物事への対処法そのものなのだ。
時期が不遇であれば、粘り強く陽に転ずる時期まで待つ、しのいでいく。そんなところだろうか。
私は中国人の口からこのような話しを聞いたのは初めてだった。
少し驚いた・・・

意識の話しもそうだ。
太極拳は「意識」で動く。それ以前に意識を働かす頭が必要だ。頭で考え、それを意識として体に伝達する。
少なくとも私はそうしているし、そういった話しであればガッテン納得するところだ。
ところが!
P老師の話しはそうじゃなかった!
P老師のいう「意識」とは頭と体が直結していなかったのだ。
私が驚きの結末を迎えることになったP老師の「意識」の話しは、ここでは割愛させていただく。

そういったわけで、休んでばかりの1時間講習はアッいうまに終わってしまった。
しかしながら、そのたった1時間ほどのP老師の話しは私共にとってなにものにも代え難い、
今後に生かすべく貴重な経験になりました。

私は台風の進路状況如何によっては東京の代表団を観に行くところだった。
でも、それを押しても北へ来て大正解だった。
Y氏との思いがけない出会い、伝統拳を愛してやまない多くの人たちの表演・・・
それを見学したことで、私は競技太極拳に参加してる自分が情けなく、ちっぽけに思えてきた。
そもそも、競技太極拳に疑問を持ちながら参加してる私の矛盾・・・
だからといって点数を上げるための表演を拒み続け最後はいつもウダウダ・・・
最後はどっちつかずでフラ〜フラ〜と、また競技太極拳に参加してしまう・・・
太極拳の大儀を忘れ、見えない何かに踊らされているのは私だ!
Y氏にも話したとおり、私は太極拳愛好者の底の底に埋められるべく存在なのだ。
太極拳してます、なんて言ってはいけない・・・そんな存在なのだ。
まったくこの10年、私は一体何をしてきたのだ?
勘違いも甚だしく、太極拳をしている気分になってたに過ぎなかったのではないか?
とにかく〜、私はまだまだだ・・・

伝統拳も・・
そういえば、その某連盟で行っている競技会のことも話しにのぼった。
多少、情報操作ともとれる話しだったのだが、競技会では制定拳が対象となり、特に規定套路を表演し、
点数化して評価するといったスポーツ化されたもので、外観と時間制限が主な審判項目になる。
そこでは文化思想、意識と気、武功などは審判項目になっていない、とのこと。
ま、確かにネ。大まかには間違いではないのだけれど、ただ・・・そこでは
伝統拳もその審判項目でバリバリ審査されてますからー!
確かに内功まで見抜ける審査員がいるかどうかは疑問だし、
ましてや瞬時に点数をださねばならない方式で、そこまではとてもとても審査できるものではない。
だけど、その制定拳と同様、伝統拳も点数化されてますからー!
中国でだってこのことは同じじゃん?
ただ、伝統拳を志してる人が、そんな競技太極拳に振り回されることのない、
次元の違うところにいる、ってことなんじゃないの?
ま、そういった競技大会で模範演技というか、表演をすることはあっても・・・

講習終了後は錚錚たるメンバーのオンパレード。最後はP老師でフィナーレ。

 Y氏の老架一路  P老師


ところで、今日一日陳式ばっかり見てると、私のような素人にもそれぞれの個性が見えてくるものだ。
私にはその技量云々は分からないが、形だけとか、鼻息だけとか、体の外だけが動いてるとか・・・
そういったことは見てるものに伝わってくるものだな、と感じた。
だからこそ、太極拳は恐ろしい。
最後は人となり(=人格)が露呈するみたいだし。
「ふ〜、今日の表演申し込まなくて助かったよ〜」(tuzi談)

協会のみなさんはP老師を囲んで最後に記念撮影となった。
私もあわてて2階からコート内に降りて、ドサクサに紛れ少しずつ距離を縮めてP老師を接写・・・
ちっぽけなデジカメを手に関係者を装う私に「あの人誰?」ってどっかのオバちゃんの声が聞こえたような・・・

思い出のアルバム

ここ北の地は芝生にウミネコが遊ぶこの写真撮るの大変だったんだからぁ!


 「イカだろっ!ここに来たらイカだよっ!イカしかないだろ!」
・・・って意気込んでたのに、帰りがけスーパーで買ったイカ焼き。でも香ばしくてまあまあ美味しかった。


冷麺・タンタン麺・ジャジャ麺。北の三大名物麺制覇! 


いやいや、この2日間の移動距離は大変なものだった。だが、ここ北の地にやってきて本当によかったと思っている。
競技大会では決して見られない套路ばかりだったし、皆さん練習に対して真摯に取り組んでおられるのが
ヒシヒシと感じられた。
そのほとんどが陳式の表演だったにも関わらず、飽きることなく最後まで楽しく拝見させてもらった。
生徒さんたちの「これからもP老師についていきます♪」という姿勢が強く伝わって、
P老師に習えるここの皆さんを羨んでも仕方がないことは承知してても、
習うべき師が身近にいない我が身を憂うことしきりだった。
私は見学しながら「私なんかまだまだだ〜・・・こんなんじゃダメだダメだぁ・・・(涙)」と自己嫌悪に陥いるばかり・・・
それでも「自分の太極拳はまだまだ未熟で、ダメだよなぁ」ってことが再確認できただけでも収穫だったと思う。
この気持ちを忘れないように、これからも精進あるのみである・・・