2004年 県大会


<予備登録>
まだ前年の全国大会も終わっていないというのに、今年の県大会の申し込みが始まった。
なんか、まだ気分が乗りませんが、登録だけは済ませないと。
昨年の孫式もそうだったが、新しく覚えた套路で出場したいな。
そうすることで自分に期限をきることができるし、自主トレにも目標ができるというもの。

この時期、私は楊振鋒の「楊氏太極剣・刀」DVDを入手した。
彼の拳は伝統楊式そのものだったし、剣・刀に関しても理論に基づいた上に
伝統楊式らしさも表現された素晴らしい楊式だった。
楊式を名乗る数多い老師の中でも彼は楊澄甫の直系でもあり、
比較的正確に伝承されたものと思われる。そんな動きなのだ。

競技では刀剣類は同一種目である。
楊式剣も楊式刀も陳式剣も陳式刀も、さらには42式剣も同一種目で競われることになるわけだ。
私は楊式剣か楊式刀で参加しようと考えた。
競技では3分以上4分以内に納めねばならない。
例えば、楊式剣だと4分を超えそうだし(速いペースで進めれば納まる)楊式刀は2分で終わってしまう。
どちらにせよ調整が必要だ。
細かいところは7月の全国大会が済んでから練っていこうと思う。

とりあえず、予備登録を済ませないことには・・・
ご承知のとおり、私の通ってる団体は武術連盟に加盟していない。
どうせ、個人で参加するのだが一応、団体のw代表にはことわっておかなければ。
そう思ってメールにて報告した。

w先生、tuziです。おはようございます。
県大会の申し込みですが、私から直接、大会実行委員に郵送してもよろしいでしょうか。
そのほうが先生の手を煩わせることがないのでは、と思いまして。
もし、私単独で郵送してもよろしいなら、早速、明日にでも送ろうか、と考えております。
どうぞ、ご指示ください。

tuzi様
  申し込み送付の件はあなたのほうからして下さって結構です。
種目ですが、あまりウロウロしないでまた孫式に挑戦してはどうですか。
  Kさんなどの成功例からもお薦めします。C老師も同じ意見でしたよ。オッと余計なことでした。


私、ウロウロしてますかね?
Kさんは全国一位の先生です。
てことは私が1位になるまで孫式で。ってことですか?
またまたあ!ご冗談を!
C老師は年に一度教えに来てくれている中国人の先生ですが、もしや、w先生ってばC老師に
「孫式独学したアホが全国大会にノコノコ出場するんだ」ってばらしちゃいました?

それに成功例って言われても・・・
私は楽しみたいだけだから・・・

とにかく7月の全国大会の成績如何で最終申し込みを決定することに。
それにしても、毎年同じ種目じゃツマンナイと思うんですけど・・・
勝つために?
勝つために毎年同じ種目なの?
ふ〜ん・・・
だったら私はいいや。
どちらにせよ勝つための練習はできないもん・・・




<全国大会結果と本登録>
孫式であわよくば入賞するとか、まぐれでシード選手になるかしたら、
県大会には孫式ででなくてもよくなりますよね♪
そんな奇跡は起こらなかったんだけど。
なもんで、「孫式規定」を追加しなければなりません・・・
今年は2種目に出るつもりです。
予備登録した「太極剣・刀」は32式剣以外の太極剣・刀すべてが同じ枠です。
私は楊式刀をすることに決めました。
なぜなら、私は北京で見つけて感動のあまりつい買ってしまった楊式刀を持っていますが、
使う機会がないままになっていたので、これを今大会でお披露目したいと考えまして・・・
こういう大会でもない限りお披露目の機会がないもんで。

ところが、練習を始めたら重いのなんのって!
鉄分タップリの磁気反応しまくりの刀です。
既にこの時点で「太極剣・刀」で全国大会に行けません。
この武器持っていったら失格だから・・・

套路は楊振鋒の伝統套路ではなく、4分ちょっとかかる楊式套路にすることにしました。
少し早めに進めれば4分以内におさめられるでしょう・・・
刀はズバッ、ズバッと滅多切りするところがよいのだし、そのように表現したいと思っています。
でもなあ、刀が重くてね・・・
早くなんてできるんでしょうか・・・
慣れれば重いのも苦にならなくなるんでしょうか・・・
でも練習だけで息が切れるんですけど・・・ゼエゼエ
(練習の詳しいもようは「自主トレ日記」2004年9・10月をご覧下さい)

それよか、県大会で磁気反応検査されて失格になったらどーしましょう?
検査はあるの?
ファスナーの表演服着なきゃ失格になるの??
だれか、おせーてー!



<武器と種目>
私が今大会出場しようとしている種目は孫式規定套路だ。
孫式は伝統拳だが、規定套路なので服装はファスナータイプの競技用表演服を着用しなければならない。
この規定が県大会において義務付けられるかどうかはわからない。(昨年は何を着てもかまわなかったが)
私はファスナータイプの競技用表演服を持っていない。
この機会に作っておかなければ・・・
万が一、県大会で失格になったら困るもの。

もうひとつの問題は武器の磁気検査である。
今回、楊式刀を使用するが、私の持っている武器は鋼鉄製で磁気反応バッチリなのである。
全国大会では磁気検査で反応を起こす武器の使用は禁止されている。
この検査が県大会でもあるのでしょうか?(今までは検査はなかったそうですが)

今大会は出場枠の大幅な改定もある。
年齢別で3枠あった総合42式が2枠になるし、自選剣・刀(42式剣含む)にはさらに32式剣まで入ってきてしまう。
これだけで単純に各県で4人は代表選手が減ることになる。このことは、ジュニア選手の強化を意味している。
中高年齢層の選手は減らされる傾向にあること・・・。

<表演服>
表演服だけは早めに発注しておこうっと!
私の住んでいる田舎には表演服を作ってくれるところはない。
近場の都市にも行って訊ねてみたが「仕上がりはいつになるかお約束できません」ということだった。
縫製を中国に発注するのだそうで、まとまった着数がない限り持って行かないのだそうだ。
これでは頼むわけにいかない。
私としては10月には仕上がって欲しいからだ。

大会の時にカタログをもらった関東の専門店にお願いするのであれば確実だ。
ところがここはチトお値段が・・・

そこで私は横浜のお店に頼むことにした。
ここなら関東の専門店より5,000円ほどお得だったし(店頭で)、布の品質も良質だった。
でも、色見本はないし、カタログもないし、電話で話しが通るだろうか・・・
まずは電話してみた。
お店の人の対応は、とてもしっかりしてるし、信頼できそうだ。
私のほうから色がわかるようにハギレを送ることにした。
競技用表演服を作った経験もないようなので、イラストを描いて同封した。

表演服で難しいのは色選びだ。
私などそうそう何着も持つわけじゃないから、慎重になる。
以前、やはり競技会参加の表演服選びで悩んでいた時、
濃い色の表演服を着ると審査員に動きが見えづらい、と教えてもらったことがあった。
淡い色のほうが動きが見えやすい、のだと。

いつも中国からチャイナボタンのついた既製品(パジャマ風)を買って着ていた私にとって
表演服を注文するのは初めてのことです。
初めての事で仕上がりが楽しみでもありそれ以上にすごく不安でもある。
色選びに失敗してないか、ものすごく心配です・・・
おまけに肝心のお値段聞き忘れてしまって、ハラハラドキドキもんである・・・

郵送したハギレが届いたら電話して欲しいと書き添えたが、連絡がないのでこちらから再度電話してみた。
「あの、お値段ですが・・・」
「19,000円です」
「ひえー!!い、いちまんきゅうしぇんえん、ですか?」
「ええ、シルクだと18,000円からで」
「あーー私、1を見逃したんですね。
先日お店に伺った時てっきり9,000円だとばかり・・・見間違えたようです・・・
そうですか。。。そうですよね。。。」
電話のお兄さんもあっはっは!と笑っていたが、アホな私は店頭の1を見逃していたようだ・・・

今回はキャンセルという事にしてもらい、電話を切ってすぐに
大会の時にカタログをもらった関東の専門店にメールした。
ケチらないで初めからこっちに注文しとけばよかったのかも・・・
ハギレだけ見てるのと、実際仕上がった色の感じは違うものです。
悩んだ末、‘薄金色’で注文しました。
この色の選択が吉とでるか凶とでるか・・・ビミョ〜〜

<套路練習と刀衣>
今年の夏は猛暑である。
しばらく河原に行くのはお休みにして、部屋で套路を覚えることに専念しようと思う。
またしても独学なので、ビデオを何度も見ながら覚える・・・
見ていただけでは覚えられないので部屋でチラッと動いてみる。
刀の代わりに小筆(4月から書道を習い始めた)を持って・・・
こんな感じで8月いっぱいは套路を覚えることに専念して、河原の練習は休もうと思う。
9月になったら河原で刀を持って練習しよう!

ところで、私が持っている楊式刀には刀衣が付いていない。
武術用品専門店に注文すると、一枚400円ほどで手に入るが、はぎれ布を買ってきて縫うことにした。
別に色の指定があるわけでも、大きさに規定があるわけでもない。
スカーフを下げたって構わない。だからって、柄物はちょっとね・・・
ま、一般的には刀衣は無地のい布。
私の目指す血の滴ったような赤である。
敵の首をバサッ!と切って血が柄を伝って下げていた刀衣が血の色に染まる・・・
あっはっは!これだべ!
・・・ということはですね、もともとは赤くなかったってことでしょ。
でしょ?
なので、もう一色下げましょう!
ま、黄色とか、青とか・・・

友人と一緒に布店に行った。この友人は面白いものを見つけるのがとにかく早い。
私もたいがい面白いものに反応するのは早いほうだが、この友人には敵わない。
手芸店のお客様は、お手製の洋服でも作ろうかというハイソなおば様方である。
その人たちの中で「血が滴ったような赤が欲しいんだけどなあ・・」と物騒極まりない会話の私らふたり。
さっそく、友人が「理想的な血の赤」をみつけてくれた。
いいじゃん、いいじゃん♪・・もう一色欲しいんだけどなあ」
はぎれコーナーのワゴンをかき回し、見つけたのが鮮やかな青!
いいじゃん、いいじゃん♪・・この青が血に染まる!(嬉)」



<表演服届く>
待ちに待った注文した規定用表演服が仕上がってきた。
ひと月前‘薄金色’で注文した例の表演服です。
宅急便で届いた包みをワクワク♪しながら開ける。
(・_・|!!

「イメージと違うんですけど・・・」
これはもう自己責任ですから・・・(涙)
金色(こんじき)に輝く・・・じゃなくて・・・ただの黄色かも・・・。
「‘薄金色’って薄〜い黄色だったのね・・・」

着てみたらまたイメージが変わるかもよ・・・
健気にも前向きな気持ちで袖をとおすtuzi。
・・・ええ、ええ。ものの見事に変わりましたよ(泣)
なんか安っぽいスケスケパジャマって感じです
しかもどこをどう見ても黄色です・・・
サイズは微妙に小さめ。
微妙に丈が短くて、つんつるてんって感じで間の抜けた感じがします。
上着の前のスリットからお股が見えてるせいでしょうか・・・
「カッコわる〜い・・・」
孫式の動きをしてみる・・・
あ〜、お股が見え見え〜〜(涙)

「縫っちゃえ!」
上着の前のスリットを半分ふさいで縫い付けちゃいました!
今さら返品はきかないし年に一度だけ着るんだから、と自分に強く言い聞かせ
郵便局に振り込むなけなしの大金・・・(痛)

初めての表演服注文顛末、この失敗からtuziが学んだこと。
その1、シルク100%を注文する時は淡い色の場合ワンサイズ大きいので注文する。
さもなくば、サイズピッタシで濃い色合の生地を選ぶこと。
その2、サイズ重視で淡い色を希望する場合はポリエステル混紡の生地を選んだほうがよい。
その3、高価な表演服などは不必要だっ!

<白ラインの靴>
今回の県大会で着ようと考えている表演服は黒と黄(規定用)である。
私が持っている運動靴は赤のラインが入っている。
表演服の色に赤のラインは合わないと思う。
太極拳用のシューズは持ってないし、高価なのでとても手が出ない。
私は近くの靴店を覗いてみた。
その靴店は昔からわが町で商売をしているふる〜い店である。
店頭には20年位前に仕入れたといってもおかしくない、時代遅れの靴が当たり前に並んでいる。
店内にもホコリをかぶった時代遅れの靴や長靴、店内奥の階段にも色あせた箱が山のように積み重なっている、
そんな田舎の靴店である。

ここになら、私の探す靴はきっとある!

そう睨んで私は店のオヤジさん(←この人が頼みの綱)に聞いてみた。
「ペッタンコの運動靴が欲しいんですけど、学校の上履きのような・・」
「学校の上履きだと・・・これなんですけど」
うーん、悪くはないけどちょっとゴツイかな。
「この底の部分がペッタンコで軽いのが理想なんですよね・・・」
「これなんかは?」

おー!!これだっ!
あったよー!!さすがだねー!(嬉)

「これです、これです!これ下さいっ!」
オヤジさんは奥の階段も探してくれたけどサイズがなかったので取り寄せとのこと。
ところで今も作ってるの?
だって、この箱見たら20年は経ってるよ・・・
店のオヤジさんは「あると思いますよ」と平然とカタログをめくっている。
「あー、ありますね」
私も半信半疑でカタログを覗き込む。
「ほんとだー、ありますねー・・んじゃ、すいませんが注文お願いします。
ところでおいくらになりますか?」
「ま、ここにあったのが1,500円だから、それ以上になることはないでしょう。今のほうが安くなると思いますよ」
「・・・え?そうなんですかねえ?」
「はい。まあ、はっきりとは分かりませんが1,500円以上にはなりませんから」
ま、どっちみち大した額ではなさそうだ。

入荷したら電話をもらうことにして、楽しみにしていたら3日ほどで連絡が来た。
すぐさま、車を飛ばし受け取りに行った。
サイズもピッタシ履き心地も最高です♪(嬉)






<二週間前>
9月に楊式刀の練習を始めた当初はあんなに重く感じた刀が、
不思議なもので練習を始めて一週間もすると軽く感じられるようになり、
いつしか動作もゆっくりとタメを持つこともできるようになっていました。慣れとは恐ろしいものです。
練習の恐ろしさの実態を初めて体験しました。
練習に勝る上達方法はないのだということを身を持って実感したのでした。

孫式のほうは2回連続の‘踏脚’を素早くすることに変更してみました。
以前から課題にしていた‘開合手’から‘単鞭’の形を整えることにも重点をおいて練習してきました。

競技大会では制限時間があるのですが、こればかりはまだ課題(苦手)です・・・
やはり体内時計ができあがるまで練習に練習を重ねるしかないのでしょう。
でも、全国大会が済んでからこの2ヶ月間、初めての楊式刀、規定孫式どちらにおいても
できる限りのことをしてきたつもりです。
楊式刀の二起脚は一発勝負の大博打です・・・
刀の受け渡しが勝負のカギってとこですかね・・・

届いた大会プログラムをみると、今年はほとんどの種目が無競争になっている。
「うまいこと振り分けられたものだな」という印象を持ったわけだが、
予備登録の情報がない私は「剣刀」でいきなり一騎打ちになってしまった。
この種目の出場が私とお相手のふたりだけなのである。
今年から「剣刀」と「32式剣」が同枠になったため全国大会に行けるのは各1名ずつ・・・
「キビシイにゃあ・・・てか撃沈だってばさ!」
お相手はこの種目の常連で全国大会連続出場している本命選手なのです。
そこに事情を知らない私がひとり割り込んだ・・・お笑いです。

<一週間前>
練習ができるのもあと5日ほどになったが雨が降ったり風が強かったりで練習できない日が続いた。
この期に及んで刀と体のタイミングが合わなかったり、独立姿勢のバランスがとれなくなってきたり・・・
それに先日嬉々として購入した靴を履いて練習してみたら実はあまり良くなかったり・・・
そりゃね、太極拳用靴ではないのだから不都合もあるわけだが、あまりにもつま先が反っていたのだ。
本来、太極拳用靴は、安定した動きをするために、つま先から踵まで真っ平らである。
これでは、つま先が浮いて動きづらい・・・(泣)
ストーブに押し当てて底のゴムを変形させよう!という荒治療も虚しく、
こうなったら、足を靴に合わせるしかない!という結論に(笑)
表演服を着て練習もしたかったが、その時間もとれず、楊式刀の二起脚は最後の最後まで‘賭け’のまま・・
tuziいざ、出陣!



<本番当日>
朝早く家を出て電車と新幹線を乗り継ぎ会場へ。
1回目の出番まで1時間ほどなので、すぐに更衣室にむかった。
そこにはハンガーにかけられた色とりどりの表演服がズラーリ!
「おおっ!」
そっか、こうして掛けていればシワシワにならないんだな・・・
今回のチャックの表演服を調達するのに苦労した経験から誰もいないことをいいことに、ちょっと触ってみる。
「どんな生地だろう?」
厚めの生地あり、テロンテロンの絹あり・・・さまざまだ。
丈はやはり長めで造りはどの表演服も私のよりシッカリしている。
「みんな、どこで作ってるんだろう・・・?」

1種目は「太極剣・刀」である。
黒の表演服を着るつもりだ。これは中国から買ってきた実はただのシルク服・・・
袖はすぼまってないし、足首にはゴムが入れられないほど細くなっている(笑)
ま、伝統楊式刀なのでこれくらいのほうが雰囲気は出るだろう、というセレクトだ。

人目のつかない上階でひとり練習。一度だけ動いて競技場(体育館)に降りた。この競技の出場者はふたりだけ。
お相手は42式剣で、全国大会常連なので、はじめっから私の点数など期待できない。
私は会場を「アッ!」と言わせるだけに専念するしかないのだ。
てか、私が何の架式してるか分かる人もいないと思うんですけど・・・



<am10:00>
出番15分前の受付なのでのんびりアリーナから見学していた。
相手選手はコートで練習に励んでいる。・・・と呼ばれてしまった。

降りて受付を済ます。
「よろしくお願いします!」
相手選手にも
「よろしくお願いします!」
「私、前に行くから刺すわよ(笑)」
「えっ!私、後ろに移動しちゃうんですよ〜」
私はA選手なので前だし、お互い寄ってきてしまうのか?
私はできるだけたち位置を前にとって始めようと考えていたので、ぶつかることはないと思うが。
「時間はどのくらい?」
「いつも3分40秒前後です。私の方が早く終わるはずです」
42式剣は4分ギリギリまでかかると予想されるので、そう答えた。
「でも、ずいぶんゆっくりなのね」
うーむ、それはきっと13勢刀をイメージしてるからではないでしょうか?
それじゃない楊式刀套路ですので、早めに動いて3分40秒くらいなのですが・・・

なーんて、会話を交わして、さて時間かな。と刀を抜いたら
「ここで休憩に入ります」



<am10:30>
楊式刀
得点に期待もないし、したがって気負いもないから、いたってリラックスムードである。
でも内心、
「これが、楊式刀ってもんだよっ!最初で最後、一回しかしないからよっく見とけよ!」
てな気分だったのだ。

‘起勢’で気を丹田に集中させると闘争心が湧いてくる。
どんなに緊張してても、‘起勢’で落ち着かせることは、日頃の練習から心がけていることだ。
大会ともなれば、客席の人前で演技するわけだから、そりゃ多少なりと緊張するものだ。
そんな緊張感はむしろあったほうが望ましい。時間も忘れて流れに乗る・・・
型が決まっていく・・・
一発勝負の二起脚も決まった!
全体が練習どおりまとまった。
おそらく3分40秒ちょっとで、時間配分もバッチリだったと思う。

終了して、そでで得点を待つ。相手選手もほどなく終了した。
・・・審査員が中央に集まる。

ゼエゼエ・・・
終わってから息が上がってきました。
深呼吸を繰り返してもゼエゼエ・・・う・・・早く結果出して・・・つらいです・・・座りたいんですけど・・・
ゼエゼエ・・・
・・・物言い審査、長すぎるんですけど。
首かしげるのやめてくんないかなぁ・・・ゼエゼエ・・・とにかく座らせて〜
私、間違わなかったし、練習どおりで悔いないし、B選手が高得点なのは納得してますからもういいでしょ〜
ゼエゼエ・・・
ふ〜、物言い審査やっと終わったよ・・・

得点!
(審1)「8.6!」
(tuzi)え?うそお!
(審1)「間違いました!」
(tuzi)げっ!
(審1)「8.45!」
(tuzi)あ〜・・・それにしても、ひどいもんだねえー・・・
(審2)「8.45!」
(審3)「8.45!」
(審4)「8.45!」
(審5)「8.45!」
(tuzi)おいおい、8.45に統一したのはいいけど、ちっとは細工してよ・・・。
(審判)「A選手、最終結果8.45!」

着替えを済ませ、客席に戻ると見学に来ていた太極拳歴10数年の知人に
「どうしてB選手と動きが違うの?」と聞かれた。
「へ?だって武器が違うし、套路も全然違うんだもん」
「じゃ、同時に違うことしてたってこと?」
「そーゆーこと。」
私より太極拳歴の長い人でさえ楊式刀を知らないのだ。
刀には刀衣が、剣には剣穂が・・・見れば分かりそうなのに・・・
武器が違ったら伝統と制定の区別がつかなくとも、套路だって違って当たりまえじゃない(泣)
この知人、同じコートで違う套路を競技することはないことだと思い込んでいたらしい。

ところでこの知人が私の動きを套路途中からだったが、デジカメで撮影してくれていた。
その場で見せてもらったが、自分が感じていた以上に私の楊式刀は素晴らしかった(笑)
自分が動いているのを初めて映像で見たが、すごく良かった!
「これが私の動き?」
いいじゃん、いいじゃん♪カッコよすぎ〜〜
自画自賛と言われようが、これだけの動きをしていたのなら観客の皆さんに恥じることなく
「これが楊式刀だ!」と宣言できそうです。
まだまだ荒削りながら2ヶ月でここまでもってこれたのだから良しとせにゃ(←自分に甘すぎっ!)
楊式刀に黒の表演服、赤と青の刀衣。色のコントラストもバッチリで、
「刀は黒く」の如くバッサバッサと首を斬り落としてました!
大成功です♪



<pm1:30>
2種目めは「孫式」だ。
2:30からなので、そろそろ着替えようかと思う。
今度はマーガロ(映画スチュワート・リトル2に出てくるカナリヤ)色した規定用のチャックの表演服をお披露目だ!

競技場に入って套路を練習する・・・
うっ、忘れた・・・あれ?ここで雲手だっけ?あれ?・・・あれれ?
1年以上も練習してて套路の順番に自信が持てないというのはどうかと思うんですけど。

伝統拳の選手は3人(各1名ずつ)
1番手が「規定楊式」
この選手は年配のおば様で、武連でも権威ある地位にいらっしゃる方のようです。
毎年、この種目に出場しておられてますが、はっきり申して「いいなあ」と感じたことがありません。
ま、概して楊式は見てて退屈なものです。
でも、香港の師匠や董先生達の楊式は見てても飽きないし、動きにも厚みや重みを感じるものです。
それだけ楊式は奥が深いのだと思います。演じ手の力量や風格がダイレクトに現れてくる。
隠しようがない、隠れようがない・・というか。

2番手が「規定陳式」
7月の全国大会で見かけなかったので
「(常連でしかも全国4位なのにファスナーの表演服持ってなくて失格だったのか?まさかね・・・)」
と思っていたので、声をかけてみた。
「あの、孫式のtuziと申します。こないだの全国大会へは出場されました?」
「はいっ!」
「そーですよねー!いやー、これは失礼!私が見逃しちゃっただけなんですね(アセアセ・・)」
私は待機しながら、陳式青年のバンバン踏み鳴らす「これでもかっ!」という陳式を見せつけられながら、
「(このお兄ちゃん、去年より下手になってない??)」と思ってしまった。
後ろ足浮いてるし!
「(陳式ってそれでいいんですか??)」
強烈な音にかき消されているが、足の動き不安定だし!調和がとれてないとでもいうか・・・
私の目には去年のほうがまだよかったような印象を持ちました。
それでも結果はいつもの9点台。
陳式は楊式と違って、派手なパフォーマンスでそのへんが巧いこと誤魔化せるのかも・・・?

さて、感動(?)のどよめき覚めやらぬ中、3番手が私の「規定孫式」
人のことで毒づいている場合ではない。
会場は楊式刀同様に「あの人何してるの?」の疑問の渦に包まれることでしょう・・・



<pm2:30>
規定孫式
私は毎日、孫式の練習をしてきた。
独学の私でも「これ以上、伸びようがないではないか」と諦めず、
動いて練習していれば「何かつかめるかもしれない」と考え、
とにかく練っていくことで「何かしら発見があるのではないか」と毎日続けてきた。
何かしらつかみたかったし、発見したかったから・・・
だけど私自身、以前との違いをはっきりと自覚することはできない。
だって、毎日毎日の積み重ねなのだから・・・
でも少しづつではあるが孫式が‘イタについてきた’感じはしている。
これからも孫式を続ける上では、今日はこれまでのベストが出せればそれで成功である。
とりあえずは套路を間違うなよ!てな感じで(笑)

もう、この期に及んでは套路のことは忘れて「流れに任せていればカラダが動いてくれる」と信じることにした。
私はこの6分のために毎日河原に行ったのだ。
套路をいったん忘れたとしても動いているうちにカラダが思いだしてくれるはずだ。
不思議にそんな自信だけは持てるようになっていた。

はじめはゆっくりペースで落ち着いて・・・
しだいに孫式らしく軽快に・・・
跳躍も高く決まった!
2度の踏脚もリズムよく決まった!
形意拳の影響か孫式には重心は後ろで手を打ち出す動作がかなり多い。
そんな動作もメリハリ良く決まった!

それにしても隣のコートの審査員までがこちらを見てるんですけど。
壁に立っているスタッフも視線がみんな私なんですけど。
360度視線がこちらに向って固まっている・・・
あとで知ったのだが、隣のコートが休憩時間だったんだと(笑)
思ったとおり、客席では「あれは何をしてるの?」と囁かれていたそうな・・・

私的には時間配分も申し分なく、少なくとも昨年とは比べものにならないほど充実感があったし、満足度も高かった。
褒めてやりたい。褒めてつかわす!
大成功です♪

得点!
(審1)「8.45!」
(tuzi)あ〜あ・・なんだよう、それー・・・(泣)
(審2)「8.50!」
(審3)「8.45!」
(審4)「8.55!」
(審5)「8.45!」
(審判)「A選手、最終結果8.46!」
(tuzi)あ〜あ・・なんだこりゃ・・・てか全国大会より低いや・・・自己ベストのできだったんだけどね!

「去年より得点上がったでしょう?」と知り合いの先生に言ってもらいましたけど、実は同じでした。
昨年も8.46だったのでした。
・・・てことは審査員の評価は‘成長なし’ってことですよね?
な、わけないじゃんよ〜!(泣&プチ怒)
認めてもらえないとは知りながらも去年と同じとは悲しすぎる(涙)

もう、いいです。
全国大会に行けさえすれば!(ふっきる)



<pm2:45>
カノト選手
昨年も出場していたカノト選手が今年は42式総合で出場した。
しかもふたりの一騎打ち。
ところが、相手選手が棄権欠場。
というわけで、まんまとカノト選手無競争で全国行きか?
癪に障るよなあ!

そのカノト選手が結果発表の掲示を見ていた。
(tuzi)「おめでとう!全国に行けるわね♪」
(カ)「そうなんですかぁ?」
「そうじゃないの?だってひとりだったじゃない。1位だもの」
あ、いや待てよ。
今年から総合AとBは同じ枠になって、A、Bから1名になったんだっけ・・・?
でも、喜ばせといて「そういえば・・・」なんて言えないから
「行けるって!」
「でも私、そんなつもりで出たんじゃないから・・・」
「そーなの?今年総合42を選んだのはなぜ?」
「去年、24式と32式剣にでちゃったし・・・88式48式は自選しなきゃならないし・・・
楊式はできないし・・・あとできるのは42式だけだったんです」
そーかい、そーかい・・・
w代表は私に同じ種目で通せ!ウロウロするな!っ言っておきながら、なんだよそれ!(苦笑)
私の目からはどう見ても全国狙いにしか見えないんだけど・・・
「・・・ふうん、まっ、とにかくひとりなんだから全国いけるんじゃないのぉ?」
・・・すると彼女、
「聞いてきます!」
と受付に向った。私には厚かましく思えるんだけど、臆びれないのが彼女流。
帰ってきた彼女。
「なんかよく分かりません・・・」
「そっか・・・でもさあ、1位なんだから閉会式で賞状はあるさ!」
出番が終わって帰ろうとしている彼女をなぜに私は引きとめてるんだ?(笑)
そんな話をしているところへ、大会の偉い先生(全国1位の)がカノトちゃんに話しかけた。
「あなた、さっき総合に出ていた人よね?どこの団体?」
「個人です」
カノトちゃんも私もここでは個人出場者だ。
「どこで習ってるの?」
その問いに正直に答えるカノトちゃん。
「カノトちゃん、すごいじゃない!あの先生から直々にお墨付きもらったようなものよ!
声かけてもらったってことは、目にとまったってことだもの」
今日のカノトちゃんは私から見て動きも得点8.43もそれなりによかった。スカウトされてもおかしくない。
それにしても私、ヤケになってカノトちゃんを褒めてません?
そんなこんなで、カノトちゃんはしっかり閉会式まで残り、賞状を手にして帰ったのでした。



<pm4:00>
閉会式
上位入賞者の表彰が行われる。
スムーズに賞状が渡せるよう、整列させられた。
その時、
「あなた剣刀にも出てた人だよね」
と並んでいた年配のおじ様に話しかけられた。
「はい、そうです」
「あれはよかったねー、刀だよね?」
「はい、楊式刀です」
「楊式か・・孫式はどこで習ったの?」
「独学です」と正直に言ってしまうと、話しがややこしくなって・・長くなって・・面倒なので、ここは
「・・・中国です」
とふっかけてみる。ま、あながち嘘でもないんだし。
「あー、やっぱりそうだ!」
え?やっぱりなんですか?
「中国のどこで?」
「・・・北京です。楊式は香港です」
これまた嘘じゃない。
武冬さんは北京体育大学だし、楊式は香港仕込みだし(笑)
と、別のおば様が
「本場で何年も習ったんですものね」
いやいや・・・何年も、って?習ったんですものね、って・・・?
おじ様はこっそりと
「ここでは審査できないから不利なんだよね。もったいないなあ・・・あの刀は本当によかったよ(マジ顔)」
うっ、うっ、嬉しいです!
涙がでるくらい嬉しいです!
ひとりでもそう言って下さる人が、いただけで大満足です!
すると話を聞いていた、また別のお姉さんが
「そうよねえ・・・頸力が見えたもの。私は8.9くらいでると思ったわよ」
ひょえー!頸力ですか?
そ、そ、それは、どうかなあ・・・?
うそでも見間違えでも、うっ、うっ、嬉しいです!
審査員の最終結果は8.45でも、心の中で8.9をつけていた人がいたということが聞けただけで満足です!
私のような部外者に、見ず知らずの方々の声が、どんなに励みになるか・・・。

少しは会場を「アッ!」と言わせられたようですので、目標達成ということで(笑)
大成功で締めくくられた大会でした♪

競技太極拳に対しての疑問は年々深まる一方ですが、
得点や評価に対する不満、疑問をいくらあげてもどうなるものでもない。
他の選手の評価に疑問を持つことがあって混乱することもしばしばですが、
自分に対する評価には別段不満もない私です。
本当に良ければ部外者であれ、初出場であれそれなりに評価してもらえるはずなんです。
だから私は得点どおり‘まだまだ’ということなのだと受け止めています。受け止めることにしています。
まだまだ努力が足りないし、練習不足で学ぶ姿勢にも至らないところがあるのだと思います。

練習は懸命に!
でも、本番当日は大いに楽しもうではありませんか!
こんな感じで参加している私です。

去年より今年、今年より来年・・というように向上していければそれでよいのです。
年々ヘタッピーになっていくのではそれこそ問題なのでして。
昨年も見てくださった人から‘去年よりよかった’という言葉も聞けましたし!
表演服も‘おかしくはなかった’‘色もよかった’‘サイズもそんなに小さくなかった’ようで、これまた一安心!
今大会では賞状の文面どおり「・・・日頃の鍛錬の成果を発揮・・・」できて、
自己ベストの表演が思う存分できたのですから悔いはありません。

そして、今日の大会は通過点にすぎません。
次回は全国大会で!


(おわり)



<後日談>
全国大会への出場者は後日選考委員会で決定される。
孫式は私ひとりなので昨年同様「行けるだろう」くらいに考えていた。
しかし、選考委員会では点数の低い1位2位は査定されるのだそうな。
え?
その査定の対象になるのは私くらいなものではありませんか?

私などは、武連からすれば部外者で、県大会で高得点など望むべくもない者です。
ですから「全国大会に出場して審査してもらいたい」という思いだけで参加してきました。
だからこそ孫式を独学もしました。
これがいくら定員内(ひとり)であっても全国大会へ得点で切られて行けないとなれば
私など、入り込む隙などなくなるのです。
永久に県代表として全国大会へ行かせてもらえそうにありません。
となれば県大会出場の意味もなくなるわけです。
私は8.46、他の1位は最低でも8.6点台の評価なのですから。
そうです。
私には全国大会へ出場する資格などないという判断がされても仕方ないかもしれません。
それだけの実力もない人間なのでしょう。
でもね、
審査員は果たして孫式や楊式刀を審査することができたのでしょうか?

まだ、行けないと決定したわけではないのですが、もし、切られたのなら黄色い表演服はお蔵入り・・・
「次回は全国大会で!」と意気込んでいた私も、いまや風前の灯・・・
この顛末いかが相成るか!
選考委員会の決定が待たれるこの頃です。




2005年全国大会

<選考委員会>
県大会で優秀な成績の選手は全国大会に出場できる。
といっても1位だから2位だから無条件でいけるというわけではなく、‘選考委員会’なるもので
最終決定されるのだそうだ。たとえ県大会で1位でも成績如何で査定される場合もあるのだという。

ある日、仕事から帰ると珍しく留守電がピッカピッカしていた。
おや?
再生。
「・・・先日は競技大会に出場していただきましてありがとうございました!
来年の全国大会に行っていただけるかどうかの問い合わせなんです。
もしよろしければお電話いただければ助かります。ピーー」

よかったー!(嬉)
なんとか選んでもらえたみたい・・・
ホッ。
もう今日は時間も遅いので明日の朝にでも電話しようと考えていたら、
その日のうちに担当の方から再度電話をいただいた。
「今回も孫式はおひとりでしたので・・・」
うっ!
やっぱり決め手は一人だったからなのね・・・
ま、理由は何であれ全国大会に行けることになった。
遊ぶどー!
(↑よゐこの濱口風)

ちゃうちゃう!
自己ベスト更新するどー!
(↑よゐこの濱口風)



2005年5月20日
<自主トレ再開>
5月のうちはまだ虫もうるさくないが、6月に入ると練習場にしてる河原は虫がうるさくて練習にならなくなる。
それに梅雨に入ると今度は雨で練習中止。
ずいぶん長いこと河原での練習をしていなかった。
昨年の県大会本番で脚を痛めたからだ。
筋を痛めたらしく、思いのほか治りが悪く、結局半年ほど練習しなかった。
果たしてどうか・・・?と思って動いてみたが、以外にも套路は覚えていた。
だけど、その動きは自覚できるほどギクシャク・・・
大会まで2ヶ月。
焦らず徐々に慣らしていこうと思う。

先日のGW恒例5月講習会で、全国大会で1位になった経験のある先生と、久しぶりにお会いした。
「tuziさん、全国大会行くんでしょ?練習してる?」という話しになった。
「ええ、いつもの河原なんですが」
「どっか、練習場借りられるといいのにね。ストップウォッチは持ってるんでしょ?」
「僕はね、音楽かけて時間を体に叩き込んだりしたんですよ」
そんなアドバイスもいただいた。
思い立って微妙に丈の短い表演服の話もしてみた。
「だいたい、みんな長めに作ってるみたいですよ。
短いのでは・・・と気にするようじゃ動作に集中できなくなるだろうし。まだ時間があるんだから作ったら?」とのこと。
「どうせ、また着るでしょ?」とも。
いやいや、チャイナボタンの表演服すら着る機会なんてないのに、
ファスナーの表演服はなおさら着る機会ありませんて・・・。
一回着るだけの表演服を新調するなんて、‘金欠病’の私にはできない相談です。



2005年6月20日
<表演服>
気になりだすと、頭から離れなくなってしまって、悩んだ末にファスナーの表演服をもう一着注文することに。
‘金欠病’なので今回はポリエステル混紡で、色はにした。
丈も既製の寸法より長めに仕立ててくれると言ってもらえた。
「言ってみるものだ・・・」
ポリエステル混紡はシルクよりかなり重いが、仕上がり寸法はピッタシだった。
色は暗めだが、それほど悪くはない。まあまあだ。
「今年はこれでいこう」

今年のタイムテーブルも届いた。日帰りできそうだ。夜行バスを使えば交通費がだいぶ浮く。
浮かしたところで、なんだと言うこともないが、行きは新幹線を使って当日の朝発って、
出番が終わったら、ゆっくりその晩の夜行バスに乗ろうか・・・と考えた。
朝行ったら、新宿伊勢丹ぺチカに行って、お腹いっぱい食べて会場入り。
腹ごなしにちょこっと練習して本番。
終わったらアメ横でものぞいて、ひとりで酒盛り打ち上げでもして夜行バスに乗るとするか・・・
・・・って、これじゃオッサンじゃん!

ところで、日が経つのは早いもので大会まで一週間をきってしまった。
ゼッケンや選手証なども届いて準備万端、本番当日を待つのみとなった。
もうそろそろ表演服を着て、当日履く靴で練習してみねばならない・・・
そんな時、読者の方から一通のメールが。
息子さんが全国大会に出場とのこと。表演服を注文しているがまだ届いていないと・・・
メールを読みながら私は「それは大変!」と他人事ではなかった。
だって、当時着る表演服に慣れていないことには・・・そう感じて読んでいた。
「わが息子、まだ表演服もできてないわ。でも本番直前にお着替えした方(笑)の例もあるから、没問題ですね^^」

あはは・・・
かなりウケました。そーでした、そーでした。そんなふとどき者がおりましたよ(爆)
自分の事棚に上げて「おめえにだけは心配してもらいたくないっ」って感じですよね(笑)



2005年7月15日
<大会当日>
あ〜あ・・・
雨が続いているからとサボリにサボって十分な練習もせず、ボルテージ下がったまま本番当日を迎えてしまった。

今年は日帰りするつもりです。
11時頃新宿に到着。
暑いです!
昨日までは過ごしやすかったのに、今日は30℃を越してるもよう。
駅の構内歩いてるだけで、なんだかクラクラしてきました・・・
新宿に来たのは、ペチカのランチを食べたかったからです。
11時からのランチですが、まだお腹がすいていないので、少しそのへんをぶらぶらしてから食べに来ようと思って、
書店を覗いたりなんかして・・。
でも、これといって欲しい本もないし、立ってるだけでクラクラして貧血のようになってしまうので
ペチカでランチがてら休むことに。

一年ぶりのペチカ。
チキンストロガノフ・・・ポットパイ・・・ペチカお昼のバイキングは980円(消費税含)でとってもお得!

うみゃーい!・・・んもう!ペチカ最高っ!


チキンストロガノフだけでもお得
私はこの日、これの3倍は食しました・・・

お腹いっぱい食べて、もうこれ以上入らない、動けなくなるまで食べた。
これから大会に出場するという心構えに欠けた無謀な行動だ。
けしからん!
・・・そう、心の中で何度も「これ以上食べるんじゃない!」と天の声が聞こえてはいたのですが、
私の弱い心はペチカの美味しさの誘惑に負け、食欲を抑えることができませんでした。
私は喉まで満杯になるまで食べまり・・・
おいしー♪

名残り惜しいペチカを後にし、私は予定より少し早く会場入りしたのでした。

<pm1:00 会場到着>
う〜、ぐるじいですぅ・・食べ過ぎましたぁ・・・
少し休んだら練習せねば。
その前に、午前中に入賞常連のI先生の種目が終わっているはずだから、
更衣室に行く前に成績をチェックしに直行。
成績掲示板前にI先生とその教室の先生方が勢ぞろい・・・
「たったいま着いたところで、まずはI先生の成績を見にと思いまして・・・」と言うとI先生、
「見なくていいから!」と、かなりご機嫌斜め・・・といっても、10位。
入賞を逃しはしたものの、常に上位をキープ。
さすがです。
そんなご機嫌斜めになるほどの成績ではないと思うのですが、先生のレベルからしたら不本意だったのでしょう。

更衣室に向う。あ〜、体調絶不調です・・・
なんだか、クラクラします・・・座りたいです。
立ってると気持ち悪くなってきます。とりあえず着替えて練習場に向った。
すると、H県に移住したタカ君を発見。
「あ〜、タカく〜ん、久しぶり〜。・・・どうだった?」
タカ君の種目も終了しているはずだ。
「うーん・・・よくなかった・・・」
「そっか・・・」
私は心の中で「(なんだよタカ君上達してないじゃんかよ〜・・・ふおっ、ふおっ、ふおっ・・・)」
と、優越感に浸ってほくそ笑む私・・・
15分くらいだろうか立ち話で雑談していたのだが、またクラクラしてきた・・・座りたいよぉ。

練習会場は選手で埋め尽くされ、私が割り込む隙などなかった。
私は練習場の床に座ってまた少し休んでいた。

<pm2:00 練習会場>
私の出番は4時頃なので3時半には集合場所に行かねばない。
逆算すれば3時頃で練習を切り上げねばない。
「(あと1時間しかない・・・)」
そろそろ始めねば・・・座っちゃいられない。
軽く準備体操をして時間を計りながら動いてみた。一応、コートの感触も確かめてみた。
やっぱり立ってると具合悪くなるので、練習もそこそこにし、更衣室に戻って休むことにした。
どのみち、今更必死に練習してもさほど変わらないだろうし・・・
この一連の具合の悪さは、食べすぎなんじゃ・・・?

更衣室内の長椅子に座ってボーッと汗がひくのを待っていたら、
近くのロッカーを使っている選手が本番の着替えを始めた。
明るい鮮やかピンクの表演服のその選手は「この色、らしくないのよね」と話している。
「似合ってるわよ」と言われても「なんだか私らしくないって感じがして」と話すその選手のゼッケン番号が
目に飛び込んできた。
「(ハッ!)」
私は急いで名簿を取り出し確認した。
「(間違いない!この人だ!)」
昨年、私に身ぐるみ剥がされて表演服を貸して下さった、あの人だ!
私はお礼もそこそこで別れてしまった昨年のお礼にと、北京(「旅行記」2005年北京参照)で買ってきたお菓子と、
少しばかりのお礼の品を持参してきていた。
競技が終わったらお渡ししようとコートに持っていくつもりでいたが、偶然にもここで会えたので、
出番の前で忙しいだろうが渡すなら今のほうがいい。
そう思って、私は話しかけた。
「あの、K選手ですよね?私、昨年表演服を貸していた者です。覚えておいでですか?」
「ああ、あの時の!」
「あの節はお礼もそこそこで・・・本当にありがとうございました。
出番の前でお忙しいでしょうが、これ、少しばかりですが受け取って下さい・・・」
「この表演服がお役に立ったのね。よかったわ♪・・・ここで見張ってたの?」
あ、いや見張ってたわけでは・・・それにその表演服じゃなかったんだけど。
「コートでお渡しするよりはと思いまして」
「ありがとう。・・・痩せましたよね。あの時はもっと太ってたように思うんだけど?」
「・・・そうですかねぇ」(←何年も体重を量っていない)
「髪型のせいかしら?」
「あ、いや髪形は昨年もこんな感じで・・・」(←ハゲはなかったけど)
「じゃ、がんばってね!」
「ありがとうございます」
K選手は今年こそ優勝を狙ってるはずだ。
ふ〜、これで、今年のお役目は果たしたって感じです。
ちゃんとお礼が言えて、よかった♪

<pm3:00 孫式見学>
そうだ、優勝狙いのK選手と、昨年組んだA選手の表演を見学しよう。
私は2組なので、両選手の表演が終わったら受付に行っても間に合うだろう。
そう思い立って会場の観客席に行った。
コートではまだ男子の孫式の選手が表演していた。
でも、ひとりでしているところをみると、時間的にも終了予定時刻を過ぎているので
‘やり直し’の選手かもしれない。
「(それにしても下手だなぁ・・・)」
なんか、見た目にも気が上のほうにあるし、手の動きも上ずっている・・・私の目にはそう見えた。
「(下手なんだから‘やり直し’するまでもないだろうに・・・)」
そう思ったが、‘やり直し’してまで食い下がるのは、それなりの選手しかいないはず。
私はゼッケンでその選手を名簿で探してみた。
「(え?)」

シード選手・・・

「(え?あれがぁ??あれでシード・・・?)」
どこがいいのか私にはさっぱりわかりません・・・

すぐに女子孫式規定が始まった。
昨年いっしょに組んだA選手、4人が終了した時点で首位だ。
表演服を貸して下さったK選手、8人が終了した時点で首位に立った。
(その後も20人終了までキープしていた)
上位入賞者はどの人も8.7台をたたき出している。
どこがどう違うか、と聞かれても上手く答えられないが、組んだ人との比較は免れないようだ。

さてと、出場30分前だ。
そろそろ受付に行かねば・・・

<pm3:30 受付>
「孫式規定のtuziです、お願いします」
「あー、きたきた!んもうっ、あなたのキャンセル票書いちゃったわよ!(怒)
ほら、すぐそこに並んでっ!(怒)」
「・・・遅くなりました。すいません」

いやあ、あっぶねえ・・・(汗)

そっか・・・30分前には整列していなければならなかったのか・・・(←のんびりしすぎ)
私は慌てて並んで、隣の人に「どうぞ宜しく」と、あいさつした。
「私じゃないわ・・・Bなの?Bはこっちの列よ・・・」

うわっ、またやっちまった!(汗)

tuziよ、一緒に組む人のゼッケン番号くらい覚えときなさい、って。

私たち2組はそれからすぐに入場した。だが、入場してからもだいぶ待ち時間がある。
男子孫式で時間が押していたし、まだ女子の1組目も終わっていない。
みんなは出番まで、コートの隅で練習していたが私は立ってると辛く、しばらく体育座りして見学していた。
1組目が終了して、審査員の方々が休憩に入った。
「(どれ・・・少し練習しようかな)」
私はいまだに套路のはじめの順番が間違えやすく、せめてそこの套路順番の確認だけでもしようかと立ち上がった。

A選手はまだコートにおられた。
表演を終えたK選手は2階の観客席に移動されたようだ。
「(A選手は相変わらず可愛いいなあ・・・私のことなど覚えてないだろうな・・・)」
・・・すると、A選手のほうから「お久しぶりです♪」と声をかけられた。
あれれ?覚えててくださったんだ(嬉)
今年もまた、A選手のほうから声をかけられてしまって恐縮です。
「今年も上達もないまま、山奥からのこのこ出てきましたぁ。(ぐふぐふ)」
「またまたぁ(笑)練習場で見てたわよ〜」
「ありゃりゃ、・・・実は今年もやっちまいましたよ・・・さっき受付でキャンセル票書かれてまして・・・」
「うふうふ♪・・・ところで今も独学なんですか?」
「はい。先生は居りませんから」
「偉いわねえ、それだけでも凄いわぁ」
「そんなことないです、仕方ないんです。そういう環境に住んでいますので」(←本心)
「hp持っていらっしゃるって・・・私はまだ見ていないんですけど」
「はい。で、で、でもどうしてそれを・・・?(汗)」
「人づてに聞いたの♪私が出てるって」
「そうですか・・・でもお名前は出てないんですよ。A選手とかなんとかで・・・」
「それでも分かったみたい♪」
「・ ・ ・ ・ ・ ・ 」(←ふしぎ〜)
「読んだ人が言うにはバリバリ練習してるとか♪」
「ひえー!それはありえな〜い!」

どこをどう読んだらバリバリ練習してることになるんだよー?
たとえどんなにバリバリ練習したところで、孫式の指導者の元で鍛えられしごかれてるわけでもなし。
ひとりで、孫式の何たるかも分からず、独自の解釈で独学したところが大会に通用するものでもなく。
大会の評価の物差しも持たず、どんなにバリバリ練習したところで、それはここで評価されるものでは決してなく・・・

<pm4:30 本番>
正直、大した進歩もなく、それなりの練習もせずサボリマンtuziは今大会を舐めきってのこのこ山奥から出てきた。
昨年の成績が初出場の割には思いのほか良かったことに気を許し、謙虚さをどこかに置き忘れ、
ペチカのランチの事だけに重点を置きのこのこやってきた。
こんな態度で恥ずかしいとも思わず、私は昨年の8.5を上回る成績が出せるものと信じて疑わなかった・・・
厚かましく、ふとどきにも、密かに入賞を狙っていたのだ。
今になって思えば「寝言も休み休み言ってろ!」の世界に浸りきっていたわけだ。
だって、昨年の8.5を上回れば、入賞に手が届く範囲だ。
それに、私の孫式が独学であれ、昨年より落ちたとは考えられない。
事実、落ちようがないではないか。

昨年より平均点が高めに設定されているようだから、今年はこのぶんなら8.5では平均以下だろう。
8.6あればなんとか入賞が狙えるかもしれない・・・
見学しながら、「(目指せ、8.6点台)」と念じていた。
そして、それは今の私になら手の届く範囲と勝手に思い込んでいたのだ。

私は新調した青の表演服で、丈を気にすることなく存分に動くことができました。
ただ・・・
分脚で失敗した。練習どおりの高さまで脚が上がらなかったのだ。
それと・・・
2回ある踏脚の2回目はゆっくり蹴り出すのが順当なのだが、2回とも速で蹴り出した。
意図してそうしたのだが、これがいけなかったのか。
「套路間違え」と判断され減点されたようだ。
もちろん、減点は覚悟の上でのことだったが、かなり大きく減点されたのでは?

自爆だ。

あとは・・・
思い当たる大きな失敗は自覚してない。
昨年よりメリハリをつけたつもりだし、単鞭だって昨年よりはバランス良く仕上げたつもりだ。
自爆はしたが、悔いはない。

「B選手、最終得点8.43」

ガーン・・・

まさか、こんなに酷いとは・・・

はっ?!もしや・・・

キャンセル票書かれてしまうほど遅刻したからですか?
それでですか?
そんなことはないだろうけど、これじゃ、孫式封印決定ですよね・・・(涙)

クラクラ・・・(暗)

もう、私なんか太極拳、辞めたほうがいいんだ・・・(涙)

ショックです・・・(暗)

なにがショックって、昨年より大会平均は上がってるのに、自分の点数が下がってしまったということ。
そのひらきたるや・・・
酷い・・・酷すぎます・・・酷い下がりようです。
何がいけなかったのでしょうか?
それすら分からないなんて手の施しようがなではありませんか・・・(涙)
やっぱり私、大会の採点基準がどうしても分かりません。

<pm5:30 結果発表>
しばし、動けず・・・ショックで硬直状態です。一刻も早くここから立ち去りたいです・・・

表演終了後、読者の方に声をかけられた。
「来年も会いましょう!」と言われても、どうでしょうか・・・
私が全国大会に来るためには孫式しかありません。
他の種目は代表が決まってるようなもので、私などの入り込む隙はないからです。
また、そこで勝ち抜いて代表になる実力も私にはありません。
また、今回の成績如何では‘孫式は封印’することも考えていました。
こんなに成績が落ちるようではこれ以上続けたところで見込みはないと思うからです。
夢が正夢になるのか・・・
(「自主トレ日記」2005年5月講習会参照)

がっかりしていても仕方がない。掲示板で最終結果をみて帰るとするか。
着替えを済ませ行ってみると偶然にもまたI先生方が!
私の結果をご覧になっていたようで
「ここにいたのね(順位)、って感じ」

キツイです。
そりゃ、キツイです・・・(涙)
あ〜・・・
下から探したほうが早いですよね。
てか、下から探したら速攻で見つかっちゃいますから・・・(涙)
30人中20うん番。うち棄権2名。
てことは下からうん番目・・・(涙)

ショック・・・
酷い下がりように、めちゃめちゃ落ち込みます・・・
クラクラ・・・(めまい)

<pm6:30 上野アメ横>
6時半、私は上野のアメ横にいた。
本当だったら初めてのアメ横訪問を楽しんでいるはずだった。

しかし、どうしても気分は晴れず、気分はガックリしたまま・・・

アメ横露店の相撲Tシャツは買いそびれるし、
スター・ウォーズペッツで闇の皇帝にしようかヨーダさまにしようか悩んでも頭が回らず、
なかなか決められず、迷ってる間も頭の中では「8.43・・・8.43・・・」が渦巻いて・・・。
まだ満足にお土産も買わないうちに、アメ横は店じまいの時間に。
てか、アメ横って夜中まで開いてるものと思い込んでましたからー(爆)

どよ〜ん、としたままアメ横を彷徨うtuzi・・・

ヨーダペッツだけを手にアメ横を去る。
駅で買った東京バナナを手みやげに、暗く帰路についた・・・(もちろん日帰り)


意気揚々、‘上野のアメ横詣で’のはずだったのに・・・

帰りの座席は満席で座れないし、数個目の駅でどうにか座れて深川弁当を食べ、
冷たいものが飲みたいと思って乗る直前に買っておいたジュースはぬるくなっていて、
しかも果汁100%かと思いきや、30%だったりで・・・。
ふて寝でもしようかと思えば、隣のサラリーマンがしきりに洟をすすってうるさいったらない。
よっぽど、ティッシュ差し出して
「洟、かめよっ!」
って言ってやりたかったが、その気力すらなく・・・。

私は自分の今後の暗い太極拳人生に思いをめぐらせていた。
そう。
私の今回の結果はすべて自分が招いたことである。
日頃のヤル気のなさ・・・
大会に臨むべく努力の怠慢・・・
しかも実力もないくせに上位を狙う、その図々しさ・・・
その報いがこのザマである。
これは当然の結果なのだ。

こうして自分が反省するところまでは簡単なこと。問題はこの反省をどう今後につないでいくか、である。
そもそも採点基準が分からないのでは修正しようがない
自分を擁護する気などさらさらないが、この2年間大会に出場している他の選手の評価を見てても
納得いかないことばかり・・・首を傾げてしまう評価の連続で、常に私の首は45度に傾いたまま・・・
そんな、審査員を相手に、「点数を上げるために」「順位を上げるために」「勝つために(?)」
どう動けというのですか?
ビラビラ〜、アピール攻撃ですか?(毒)
それとも
まったり、ゆっくり、だら〜、と動く練習ですか?(毒)

できませんて!

孫式なのに、ビラビラ〜、まったり、ゆっくり、だら〜、はありえませんて!
孫式に限って言えば、高得点の人の動きは‘あっさり’しているように私には感じましたから、
もっと、架式を高くして‘あっさり’‘さっぱり’、ポン酢のように動けばよかったのですか?(毒)
ふむ・・・(ため息)
ここでいくら毒を吐いても仕方ない・・・(しょんぼり)

こんな時は、初心に還ろうではないか。
そうだった。
私は太極拳を楽しみたいと競技大会に出始めた。
しかし、太極拳を楽しむのと、競技大会を楽しむのは同じではなかったのだ。
競技大会を楽しむというのは、評価と順位がすべてだった。
いくら自己満足できても、それなりの評価が得られなければ楽しむことなどできない。
事実、成績が落ちたことで、このありさまではないか。アメ横も楽しめないじゃないか・・・。
所詮、競技大会で得点や順位を度外視して楽しむなどというのは綺麗事なのだろう。
勝てなければツマラナイ。
それが競技の世界なのだと思うようになった。
そして、いつしか私は競技大会のための練習から抜け出せなくなっていた。
県大会と全国大会を繰り返し、「来年こそは」と思う後悔の念だけで参加して、
その循環の輪から抜け出せなくなっていた。
しかも、そのことに気づくこともできなかった。底なし沼から這い上がれないでもがいてるような・・・
もがけばもがくほど深みにはまっていって・・・
これでは太極拳を楽しむのではなく、「競技大会に参加せねば」という義務感だけで日々を送っているようなものだ。
どうしてこんなことになってしまったのか・・・

「‘太極拳を楽しむ’こと自体しょせんは絵空事なのだろうか?」
事実そう考えたこともあった。
「私はいったい何のために太極拳をしてるの?」
その答えはない。
今の私は、太極拳をつづけていく自信をすっかり無くしてしまった。
そして、習うこと、教わることにも意味を見出せなくなってしまった。
習うってナンデスカ?
教わるってナンデスカ?
太極拳をつづけるのはナゼデスカ?
評価を求めるのはナゼデスカ?
その評価は正しいのデスカ?

太極拳てナンデスカ?